ニートが好きだね?

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昨日と違うニートになる。頭はたくさん動かした。手の動くままにやってみるよ。

ニートが好きだね?

『グリズリーマン』のティモシー・トレッドウェルから人間と動物の向き合い方を学ぶ

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人間と動物の境界線を考えさせられる映画

『グリズリーマン』のティモシー・トレッドウェル氏からアラスカでのグリズリーとの暮らしを通して人間と動物の向き合い方を学びました。アメリカの映画です。この記事は※ネタバレがあります注意してください。

基本的には夏の間13年もの期間アラスカでグリズリーを追い続けた動物愛好家のティモシー・トレッドウェル氏の姿を描いたドキュメンタリー映画です。

グリズリーとは

まずこの映画の話に行く前にグリズリーについて調べてみましょう。

The grizzly bear (Ursus arctos ssp., or Ursus arctos horribilis), also known as the "North American brown bear", is a large population or subspecies[1] of the brown bear inhabiting North America.

Grizzly bear - Wikipedia より引用

 北アメリカに生息するクマ科の大型動物です。

ハイイログマのことでヒグマの一亜種です。日本でもグリズリーの名前は聞いたことある人はいると思います。

別名アメリカヒグマで内陸と沿岸で同種を区別して呼んでいる様ですが明確な基準はないそうです。

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ティモシー・トレッドウェル氏について

Timothy Treadwell (born Timothy William Dexter; April 29, 1957 – October 5, 2003) was an American bear enthusiast, environmentalist, and documentary filmmaker and founder of the bear-protection organization Grizzly People. He lived among grizzly bears of Katmai National Park in Alaska for 13 summers. At the end of his 13th summer in the park, in 2003, he and his girlfriend Amie Huguenard were killed and almost fully eaten by a 28-year-old brown bear, whose stomach was later found to contain human remains and clothing.

Timothy Treadwell - Wikipediaより引用

 

en.wikipedia.org

ティモシー・トレッドウェル氏は1957年に生まれ映画では動物愛好家と紹介されていましたが、ここではあくまでクマ愛好家となっています。

後に書いていきますがグリズリーピープルという保護団体の創設者で、カトマイ国立公園で13年もの主に夏の間グリズリーの生態を観察し続けました。

しかし13年目の夏が過ぎた10月ごろ一緒にいた女性と共にグリズリーに襲われ死亡しています。

そしてその生涯、仕事をヴェルナー・ヘルツォーク氏によって『グリズリーマン』として制作され今回はそれを僕は観たわけです。それでは映画の話にいきたいと思います。

野生動物の保護を世の中に訴えようとしていた

ティモシーの撮った映像

この映画ではティモシーが記録した映像がたくさん使われています。ティモシーは自分の活動を記録しいつか映画を作ろうと考えていたようです。ティモシーが映像を残し始めて亡くなるまでの最後の5年間の活動記録、日記、100時間以上の映像からティモシーとグリズリーを学んでいきます。

監督はティモシーが撮りたかったのは野生のグリズリーの生態だと述べています。そして監督自身も数多くの野生動物を撮ってきたそうですがティモシーの映像はただの記録映像とは違い美しい物語を感じたそうです。

映像には生きる喜びと重苦しい不安が描かれていた 自分の人間らしさを抑制してクマとの絆を結ぶことが彼の望みだった

映画『グリズリーマン』より引用

 人と動物との境界線を越えて絆を結ぶことを追い求めていたようです。

映像に残るティモシーが語るグリズリーと活動

冷静に対応することが大切だそうです。ティモシーは慌てたり弱さをみせるとこの世界では一瞬で命を落とすと言います。3m以上ある巨大なクマの姿にとても興奮していました。

彼は学校で子供たちに無償で野生動物の魅力を伝える活動をしていました。それくらいこの活動に使命を感じていたようです。

メディアに取り上げられるようになってきた彼はインタビューでこのように述べていました。取材した男性の反応は正気の沙汰じゃないといったような様子でした。

ティモシー「クマは誤解されている」

 男性「クマに殺されそうな状況でも丸腰でいるなんて信じられません」

ティモシー「命が危なくてもクマは殺さない 彼らの巣も荒らさないよ」

映画『グリズリーマン』より引用

ティモシーにとっての“聖域”と“グリズリーの迷宮” カトマイ国立公園

ティモシーはこの地を“聖域”と名付けました。そしてサケが上ってくる川を“グリズリーの迷宮”と呼んだのです。

“グリズリーの迷宮”においてはたびたび映像ないでも出てきます。ティモシーはクマを傷つける人間と戦いこの土地を守る英雄だと考えるようになっていきました。

しかしその“聖域”はあくまで連邦政府の管理下にあるカトマイ国立公園なのです。このあたりからただの動物への愛だけではない何かを僕はティモシーに感じ始めました。

www.gousa.jp

カトマイ国立公園 | GoUSA(参考サイト)

アメリカのオフィシャルトラベルサイトだそうです。カトマイ国立公園について口コミ等が載っています。良かったら見てください。

ちなみに月別で気温がみれるのですが記事を書いている11月はー1~4℃くらいの気温みたいです。

サイトに載っているようにグリズリーだけでなくキツネや魚、鳥など、たくさんの生物がいることが分かります。

ティモシーの動物への接し方 野生動物の擬人化

数々の映像を観ると感じるのですがティモシーはグリズリーや出会ったキツネ達の多くに名前をつけていきます。

そして映像の中でそれをとても嬉しそうに話すのです。僕はこの映画を2回みても見分けがつきませんでしたがティモシーは本当に判別している様に見えました。

あるシーンでグリズリーの「チョコレート」とキツネの「スピリット」とティモシーの3種が一緒に映るシーンがあります。たしかにその瞬間は野生動物と人間の境界をまるで感じないような映像でした。

現地で彼を見た人は“まるでクマのような人”だったと言います。うなり声をあげたりしていたようですが原因はわかりません。

ティモシーはキツネの「ティミー」との絆を語るシーンがあります。

「彼とは10年以上前に知り合ったんだ 僕の靴にオシッコをして一緒に歩き回った 僕の友達 ティミーだ 一緒に見張ってるんだ 彼の世話になってるよ 愛してる こうして野生の動物とも絆を結ぶことができるんだ 僕も野生的な人間だけどね」

映画『グリズリーマン』より引用

これらのシーンを通して僕はティモシーには野生動物と人間の境界がなく、まるでグリズリーやキツネを人間かのように接している様に感じてきます。そしてこれは複数の捉え方ができるのではないかということです。それについては後に書いていきます。

ティモシーからみた自分と過去

彼はこんな風に自分のことを語っている映像がありました。

「僕は争わず 受け身で信じやすい人間だ 女の子はそんなやつ嫌いかな?偉大な男なんだぜ 先は見えないが楽しい人生を送ってる」

映画『グリズリーマン』より引用

なんで女の子にモテないんだろうと悩みつつ自分について語るティモシーの姿はどこか寂しそうに僕には感じました。

そしてティモシーは昔、お酒に溺れていたことを告白します。そして禁酒プログラム等あらゆる手段を試しましたがどうしてもやめられず死にかけたそうです。両親の話では薬物にも苦しんでいた時期があったようです。

そんな中、ティモシーはクマの国があることを知りそして保護しないと危機的な状況にあることを知ったのです。そしてティモシーはクマとこんな約束をしたそうです。

「“君たちを救うから僕を救ってくれ”」

 映画『グリズリーマン』より引用

 そして活動に打ち込むことでお酒を断ちこれは動物たちのおかげだ、奇跡だと捉えたようです。彼は神秘的な存在になるために孤独を選んでいましたがたまに女性といたこともあったようです。最後の2年はある女性といたようです。

基本的に1人でクマを守ってきた彼のスタイルに反する行為であると監督は指摘しています。

両親と友人が語るティモシーの過去

少年時代は成績も中の上くらいだったとティモシーの母親は語っています。そしてリスの「ウィリー」という友達がいたようです。

友人は彼は薬物から立ち直ったあたりから転換期になったといいます。そして違う自分になろうとしていたそうです。出身地を偽り孤児だと嘘をつくようになったそうです。

ジュエルによるとたくさんの問題を抱えていたと言います。この友人たちの話から考えていくと人間の社会に対しての問題を抱えているような背景が徐々にはっきりしてきたように感じました。

ティモシーの考える調和のとれた世界と目の前で起こる現実の世界

ある映像のなかで彼の考えが覆されるものと出会います。

「オスのクマは時に子グマを殺す メスの授乳をやめさせ交尾ができるようにするためだ」

 映画『グリズリーマン』より引用

子グマの亡骸、捕食された子ギツネの亡骸を見てティモシーは「理解できない」と口にします。監督も指摘しますがここがすごく重要なポイントだと思いました。

このティモシーの言う「理解できない」は自然界における捕食動物の存在を否定していることに繋がってしまうからです。

そして徐々にティモシーは訪問者を侵略者と見るようになり人を守るために規則を作っていく公園管理局も敵として見るようになっていきます。法を破ってでもクマを守ってやると暴走が加速化しているように思えました。

ティモシーの死と周囲の意見を中立的に考える

2003年ティモシーは女性と共にクマに襲われて死亡しました。この女性については家族がコメントを拒否している様なのでここでは取り扱いません。

本来なら夏の探検を終えると帰還していたのですが空港でもめてキャンプ地に戻っていたようです。そのため10月にこの地に滞在していました。

そして28歳とおもわれるクマに襲われティモシーと女性は死亡します。内容が割とグロテスクなので伏せますが気になる方は調べてください。

彼の友人や元恋人等は肯定的な意見が多かったです。もちろん親しい関係であることはもちろんですが彼の生き方や活動を尊敬している様子も感じられました。

否定的な意見としては寄付金目当てに活動しているや誹謗中傷的なものがおおく余り参考になりそうなものはありませんでした。彼の遺体を運んだヘリコプターの操縦士の方の意見は彼の生き方は本望であったかもしれないが一緒にいた女性が気の毒だったという立場を示していて、この意見が関わっている人の中で数少ない意見だったと感じました。

医者で検視官のフランク・ファリコ氏はティモシーと女性の襲われたときの状況を検証しティモシーは自分が襲われている最中も必死に女性を守ろう、逃がそうとしていたとは述べていますがあくまで瞬間的(6分程の出来事だったそうです)な部分の意見でありティモシー自体の生き方には特に触れていません。

アルティーク博物館のスヴェン・ハーカンソン博士はアラスカ先住民とクマには7000年の歴史がありその境界線をティモシーは超えてしまったといいます。彼のクマになりたがる行為は守ろうとしてのことだろうがそれがクマの人間への警戒心を薄めたのではないかと考えていました。博士についてと博物館については以下に載せておきます。

Sven Haakanson(参考サイト)

Alutiiq Museum(参考サイト)

ラリー・ヴァン・ダエル氏というクマの研究家の方はたしかにクマを恐れて打ち殺してしまうような人間や密猟するものもいるが、ここ20年ではアラスカではほとんど起きていないと述べていました。彼については以下で紹介されていたので載せておきます。30年以上アラスカでクマの活動している方だそうです。

Larry Van Daele - Anchorage Daily News(参考サイト)

映画についてはこれで終わります。

学んだことと書きたいこと

最終的にはティモシーが行ってきた活動はとても尊敬できると僕は考えます。

ですが研究者や博士の方が言っているように中立的に考えることもとても重要だと思いました。

そして何より感じたのが彼は人間界で絆や愛を理解できなかったから動物界にそれを求めたように僕には映りました。そしていつの間にか愛すべき動物の中にも理解できないものができてしまったように感じます。

ティモシーの言った「理解できない」という捕食動物の存在の否定は動物を愛護しようとする立場の者としては差別的であり行き過ぎた暴走のように感じます。

動物を人のように愛したティモシーの生き方は素敵ですがそれがどこか歪んでしまった理由から生まれたようなものを感じました。

それでも彼は行動して亡くなってしまいましたがこうして記録に残っていることは監督の力もありますが凄いことです。

人間も動物でありグリズリーに限らず他種との境界線というのが何故作られてきたのかというのは一言では言えない長い歴史の上に成り立っていると思います。

いつの間にか人間が愛せなくなり動物を愛するようになりその動物に人間的な部分を重ね合わせているようにも捉えられるこのような境界線の無くし方がどうなのかはいろんな意見がありそうです。

ただどんな理由があったにせよ1種の生き物を心から愛せたのは人間に限らず充分凄いことだと思いました。

余談ですが最後に流れるDon Edwardsの『Coyotes』て曲とてもいいです。

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グリズリーマン (Grizzly Man)

予告編はこちら

www.youtube.com

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